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2025年8月12日、米国農務省(USDA)は「世界農産物需給予測(WASDE)レポート」を発表しました。今回のレポートでは、主要な穀物や農産物の需給予測に大きな修正が見られ、特にトウモロコシ市場では記録的な生産量予測が示されました。本記事では、初心者の方にも分かりやすいように、今回のWASDEレポートの主要なポイントを解説し、今後の市場展望について考察します。
1. トウモロコシ(Corn):記録的な生産量と在庫増
今回のレポートで最も注目すべきは、米国トウモロコシの生産量予測です。
- 生産量:2025/26年度の米国の生産量は、過去最高の167億ブッシェルになると予測されました。これは前月から10億ブッシェルも増加しており、過去最高の2023/24年度をさらに14億ブッシェル上回る水準です。
- 在庫:生産量の増加に伴い、輸出量と国内消費量も上方修正されましたが、供給の増加が需要を上回るため、期末在庫は21億ブッシェルと予測されています。これは2018/19年度以来の最高水準となります。
- 価格:潤沢な供給を背景に、今シーズンの農家平均価格は1ブッシェルあたり3.90ドルへと引き下げられました。
このデータは、市場にトウモロコシの供給過剰感が強まる可能性を示唆しており、価格のさらなる下落圧力となる可能性があります。
2. 小麦(Wheat):供給ひっ迫と期末在庫の減少
トウモロコシとは対照的に、小麦市場は供給のタイトさが継続する見通しです。
- 米国:生産量予測は減少したものの、輸出は堅調に推移する見込みです。これにより、期末在庫は2,364万トンと前月予測から減少しました。
- グローバル:中国、ブラジル、アルゼンチンの生産量減少が主因となり、世界の生産量、消費量、期末在庫はいずれも下方修正されました。特に世界の期末在庫は、2億6,008万トンと2015/16年度以来の低水準になると予測されています。
供給ひっ迫の懸念は、市場のボラティリティを高める可能性があります。
3. 大豆(Soybeans):生産量の減少と価格の横ばい
米国大豆の需給は、生産量の減少が主なポイントとなります。
- 生産量:2025/26年度の生産量は、収穫面積の減少を主因として4300万ブッシェル減少し、43億ブッシェルになると予測されています。
- 在庫:生産量の減少により、期末在庫は前月予測から2000万ブッシェル減少し、2億9000万ブッシェルになりました。
- 価格:生産量減少による供給不安がある一方で、輸出のペースが鈍化しているため、農家平均価格は1ブッシェルあたり10.10ドルと横ばいの見通しです。
4. 綿花(Cotton):大幅な生産量減少と価格上昇
米国綿花は、供給不足が鮮明になりました。
- 生産量:米国綿花の生産量予測は、南西部での乾燥気候により作付面積が減少し、放棄率が上昇したことを受け、前月から大幅に下方修正されました。生産量は前月から140万ベール近く減少し、1,320万ベールと予測されています。
- 在庫と価格:生産量減少により、期末在庫は前月から100万ベール減少し、360万ベールになると見られています。この供給不足感から、農家平均価格は1ポンドあたり64セントへと上方修正されました。
5. 畜産物・乳製品:食肉の供給減と牛乳生産の増加
- 食肉:2025年の牛肉、豚肉、七面鳥の生産量予測は下方修正されました。食肉供給のひっ迫を受けて、肉牛と豚肉の価格予測は上方修正されています。
- 乳製品:一方で、牛乳の生産量予測は2025年、2026年ともに上方修正されました。バター価格は下落予測ですが、チーズや無脂肪粉乳は横ばいから上昇の見通しです。
まとめ
今回のWASDEレポートは、穀物市場においてトウモロコシの供給増加と、小麦・大豆・綿花の供給ひっ迫という、異なる方向性のトレンドを示しました。特に、記録的なトウモロコシ生産量予測は、今後数ヶ月間の市場の主要なテーマとなるでしょう。一方で、天候不順による供給リスクは依然として残っており、今後の市場動向を注視することが重要です。