金(ゴールド)安全資産

コモディティ投資における金(ゴールド)はなぜ安全資産?その歴史と投資する上での注意点

はじめに

株式市場が不安定な時や、世界情勢に不安が高まるニュースが流れると、「有事の金(ゴールド)」という言葉を耳にすることがあります。金は、古くから富の象徴としてだけでなく、**「安全資産」**としての役割も果たしてきました。しかし、「なぜ金が安全資産なのか?」その理由を深く理解している方は少ないかもしれません。

今回は、金の歴史的な背景から、安全資産と呼ばれる所以、そして金投資を行う上でのメリット・デメリット、さらに注意点までを、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。


1. 金(ゴールド)が安全資産と呼ばれる歴史的背景

金が安全資産として認識されるようになったのは、決して最近のことではありません。その歴史は数千年に及びます。

① 普遍的な価値と供給量の希少性

金は、その輝きと加工のしやすさから、古くから装飾品や貨幣として世界中で使われてきました。また、化学的に安定しており錆びにくく、その美しい輝きを保ち続ける特性は、普遍的な価値を持つ要因となっています。さらに、地球上に存在する量に限りがある希少な金属であることも、その価値を支える大きな理由です。

② 信用リスクがない「実物資産」

株式は企業、債券は国や企業の信用に裏付けされていますが、金はそれ自体に価値がある**「実物資産」**です。国が破綻したり、企業が倒産したりしても、金の価値がゼロになることはありません。この「信用リスクがない」という点が、不確実性の高い時代に投資家が金に資金を向ける最大の理由です。

③ 歴史的な「貨幣」としての役割

かつて、多くの国で金を通貨の価値の基準とする金本位制が採用されていました。これは、紙幣を金と交換できることを保証する制度で、紙幣の信認を支えていました。金本位制は現在ではほとんど廃止されていますが、その名残として、金は今でも通貨の信頼性を補完する役割を担っています。各国の中央銀行が金準備を保有しているのは、このためです。World Gold Councilのデータでも、中央銀行の金購入動向は重要な市場指標となっています。

2. 金投資の3つのメリット

安全資産である金に投資することは、ポートフォリオに多くのメリットをもたらします。

① 有事の際の「安全資産」としての機能

前述の通り、経済危機、金融不安、戦争、テロなどの地政学リスクが高まる局面では、株式や債券といったリスク資産から資金が引き揚げられ、金に資金が流入する傾向があります。これにより、金価格が上昇し、他の資産が下落する中で、ポートフォリオ全体の損失を和らげる役割を果たします。

② インフレヘッジ効果

金はインフレに強い資産としても知られています。物価が上昇し、通貨の価値が目減りするインフレ局面では、モノである金の価値は相対的に上昇する傾向があります。これは、インフレによる資産の実質価値の目減りを防ぐインフレヘッジとして機能します。

③ ドルと逆相関の関係

金は米ドル建てで取引されることが多いため、一般的に米ドルの価値(ドルインデックス:DXYなど)と逆相関の関係にあります。つまり、ドルが安くなると金の価格は上がりやすくなり、ドル高になると金価格は下がりやすくなる傾向があります。これにより、ポートフォリオ内でドル資産と金を組み合わせることで、為替変動リスクを分散する効果も期待できます。ただし、市場の状況によっては相関関係が崩れることもあります。


3. 金投資の3つのデメリットと注意点

安全資産としての魅力がある一方で、金投資には注意すべき点も存在します。

① 配当・利子がない

金は「実物資産」であるため、株式のように配当金が支払われたり、債券のように利子が付いたりすることはありません。投資の利益は、購入時と売却時の価格差(キャピタルゲイン)のみとなります。長期保有する際に、この点は大きな違いとなります。

② 価格変動リスク(ボラティリティ)

金は安全資産と呼ばれますが、価格変動が全くないわけではありません。地政学リスクの沈静化や金融引き締め局面などでは、金価格が下落することもあります。短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。

③ 保管コストと手数料

金現物(金地金や金貨)を購入した場合、盗難のリスクを避けるために専門業者に預ける必要があり、その際には保管料が発生します。また、現物購入時には売買手数料が比較的割高になることがあります。

  • 対策: 保管コストや手間を抑えたい場合は、金ETF(上場投資信託)や純金積立などの間接的な投資方法を検討しましょう。これらは少額から始められ、現物保管の手間もありません。

まとめ

金は、その普遍的な価値、信用リスクのなさ、そして歴史的な役割から、「安全資産」として、またインフレヘッジやリスク分散の手段として非常に有効な投資対象です。

しかし、配当がないことや価格変動リスク、保管コストなどのデメリットも理解しておく必要があります。初心者の方は、金ETFや純金積立など、比較的少額から始められる方法で、ポートフォリオの一部に金を組み込むことを検討してみましょう。不確実性の高い時代において、金はあなたの資産を守る強力な味方となるはずです。

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